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  おいものせなかだよりウラ面        2016年7月20日(水) [おいものせなか通信]

              「人間の戦場」 と Mちゃん             2016.7.20  

   ドキュメンタリー映画『広河隆一 人間の戦場』は、フォトジャーナリスト広河隆一の仕事や
  生き方と、その静かな語り口と謙虚な姿勢が観客を魅了した映画だった。
  「ジャーナリストである前に、人間である。目の前に苦しんでる人がいたら、手をさしのべる」。
  人間よりも、「国民」を優先すれば国益のために、「会社の人間」を優先すれば企業の利益の
  ために動くことになる。誰でもが公平に与えられている権利、それは「生きる権利」だという。
  その権利が、人としての尊厳が奪われたときに、広河隆一は、そこを「人間の戦場」と呼んだ。
  
  実は、映画のタイトルの「戦場」と人々が逃げ惑う写真に、悲惨な戦場の映画と思われたのか、
  前売りはかんばしくなかった。広報も頑張ったつもりだったが、上映1週間前で採算目標人数
  の約半分の予約に、胃が痛くなるような想いだった。


   その上映1週間前の土曜日、親友Mちゃん(以下敬称略)の死の知らせに、その場で泣き崩れた。
  Mは、約20年前に花巻に住んでいた頃のお客さんで、山形市に移っても毎月のように注文を続け、
  周囲にもおいもの商品を宣伝してくれた。「同じものだったら、おいもで買う」どころか、「あのね、
  圧力鍋がネットで2割引きなんだけど、おいもは?」とわざわざ聞いてきて、「うわー、うちは無理。
  ネットで買っていいよ」と言ったのに、「おいもで買うわ」と。

   調味料とせっけんの注文もいつもたくさんで、それだけ毎日一生懸命に料理や掃除・洗濯を、
  家族のために手抜きせずにやっている様子が垣間見れた。パッチワークの腕はプロ並みで、おい
  もの10周年の節目にも、「何かできることある?」と、ネーム入りバッグをたくさん作ってくれた。

  以前、私が半ウツになって、非常識にも小・中学生の娘を残し、長男に店を任せて、5週間の旅
  (夫付き)に出てる間、Mは色んな種類のパンをたくさん焼いて、「みんな、お留守番えらいね!」と
  パンの絵と説明と子どもたちへの手紙を添えて、宅急便で2回も送ってくれた。
  自分は我慢してでも、家族や人には愛情を惜しまない、本当に優しい人だった。


   3日後の7月5日、Mとの対面を終えて帰宅し、玄関のドアを開けようとしたら、何かが目の
  前をサーと飛び去った。黒い羽根に緑の体のすごく綺麗なとんぼだった。玄関脇のモッコウ
  バラの枝にじっととまった。夫も私も初めて見た黒いとんぼ。実は、「羽黒とんぼ」という名で、
  お盆の頃に飛ぶので「神様とんぼ」という名も。更に、「亡くなった人の魂は、蝶やとんぼに
  姿を変えて現れるという言い伝え」に、来てくれたんだ!

              とんぼ.jpg

   数日後に迫った映画も、周りの人が呼びかけてくれたりで、Mが見守ってくれると思うと
  ジタバタしなくなった。そして、上映3日前から予約が次々と入り、目標人数を上回って
  黒字になり、皆映画に感動して大成功だった。

   その後の定休日に、疲れを癒しに近くの大沢温泉に行ったとき、川をのぞく半露天風呂の
  岩の上に蛾がとまっていた。黒い羽根に黄金模様の美しい蛾。あ、Mだ!実は15年前、
  実母の初七日を終えて戻り、このお風呂に来て、同じ岩の上に蝶のような綺麗な蛾がじっと
  とまっているのを見て、母だと思った。生前一緒に旅行に行く機会がなかった母が、一緒に
  温泉に入りに来たんだね…。その時の記憶がよみがえった。

                 蛾.jpg
 
   翌朝のこと、玄関のドアを開けると、目の前に黒い立派なカラスが1羽、ベンチにちょこんと
  いてびっくり。カメラを向けても、しばらくジッとしている。こんなに逃げないカラスは初めてだ。
  またMなの?その日、Mのご主人からお悔やみのお返しが届いた。

                 カラス.jpg

   翌日、Mが花巻にいた頃の友人が来て、お店でMの話をしていたとき、夫がふと窓の方を
  指して、「ホラ、黒アゲハがいる!すごく珍しいよ」それは、黒くて大きい綺麗な蝶、「黒アゲハ」。
  庭をのぞむ薄いカーテンにピタッと張り付いて動かない。まるで、私たちの話を聞いていたかの
  ように。この10日間で4回も黒い羽根の姿になって来てくれたのはMだと、思っている。
 
                  蝶.jpg

   夫が、「あの羽黒とんぼがね、土曜の映画の日まで(5日間も)、ウラの小屋の方にずっといた
  んだよ。でも、日曜日にはいなくなってたな」。えー!?Mが映画が終わるまでいてくれたんだ。
  心配していてくれたんだと思うと、涙が出た。

   その夜の夕食時、「俺もさすがに、この4回も続いたのには、びっくりしたよ。よほど、Mちゃんは
  ぶんちゃんのことを好きだったんだなあ」と言われて、また泣いた。
  「Mは、本当にあげる(give)人で、私はもらってばかりだった。Mの想いにどれだけ応えてあげら
  れたかと思うと、なさけない。M―、ごめんなさい」と、叫んだ。

    
   失って初めて、事の大事さを知る。あたりまえにやっていたことが、もうできない。
  私より11歳も若かったが、すべてにおいて、きちんと完璧にこなし、ずっとしっかりしていた。
  いつか、今つらいことも、温泉に入りながら笑い飛ばせる日も来るだろうと思っていたのに。

   Mが、得意の料理やお菓子のレシピ帳と共に、野菜や草花のスケッチを描きためていたことを
  通夜の席で知った。その上手さに驚嘆しながら頁をめくっていくと、一番最後に、「私がよく使って
  いる調味料」と題して、瓶とラベルまで描いたリストの右下に、「お問合せは、おいものせなかへ」
  と、連絡先まで書いてある…。そばで、ご家族が、「これからもおいもさんに、注文するからね」。

   このMの優しい草花のイラスト。ずっと見ていたい、見せたい。カレンダーがいいかなあ。
   さ来年2018年は、おいもの満25周年にあたる年。Mがいたら、きっと、「お祝いに何かつくろ
   うか?」と言うに違いない。だから、今度は私がMのイラストを使って、おいものカレンダーを
   つくったら喜ぶかな。

    あ、ごめん…。もしも、ご家族がこころよく了承してくれたらの話だった。      
                                                 
                                                    (新田ぶん)


  おいものせなかだより7・8月オモテ  2016年7月20日(水) [おいものせなか通信]

  やっと、今日の夕方おいものせなかだよりができました。ウラ面書くのに苦労して、発行が
  遅れてしまい、7・8月合併号です。ウラ面は、写真が入ると長くなるので、別にupします。

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